アッシジに着いた日の午後、
ホテルで地図を貰いました。
その時に、オーナーのステファノさんが
地図を見ながら、観光場所について説明してくれたとき、
こんなことを言いました。
「旧市街を出てお散歩したいなら、
聖ダミアーノ教会とかヘルミタージュがありますよ。
ヘルミタージュは山の中にあるから、
今日はきっと雪景色でキレイでしょうね」
雪景色!
そう思った私は、そちらへ行きかたを聞いたところ、
片道4kmあり、しかも急な上り坂なので、
「行きはタクシーを使って、
帰りは歩いてきたら楽だと思いますよ」
と教えてくれました。
とりあえずお昼時になったので、
ステファノさんに予約してもらった、
ホテルと同系列のレストランでランチを食べたら、
なんと10%割引してくれました。
ヘルミタージュへ行く前に、
ステファノさんにお礼を言おうとホテルに立ち寄ったら、
そこで、またカプチーノを淹れてくれました。
カプチーノを飲んで、ホテルを出発しました。
4kmだったら
歩いて1時間くらいだと思いましたが、
私は上り坂を歩くのが不得意(遅い)ので、
タクシーに乗ることにしました。
日本の山道を彷彿とさせるような
U字カーブを何回も曲がりながら、
ぐんぐんんと山を登っていきます。
10分くらいかかって、ようやく入口に到着しました。
思っていたよりも距離があったので、
タクシーに乗って、正解でした。
しかも、そこは真冬の世界でした。
首をかしげるようにして咲いているクリスマスローズが、
とても可憐でした。
ここは、ユネスコ世界遺産にも指定されている、
カルチェッリと呼ばれる場所です。
13世紀に聖フランチェスコと同志たちが
ここに籠って瞑想をしていたと言われており、
瞑想をしていた洞窟や、聖堂などがあります。
幾つかの建物が密集していて、
小さな迷路のようでした。
内部は撮影禁止なので、
お見せする写真がないのですが、
聖フランチェスコが横たわった岩穴とか、
悪魔が表れて、逃げるときに落ちた穴だとか、
そういったものがありました。
建物の周りには森を貫く歩道が整備されているので、
足を踏み入れてみたのですが・・・・
ご覧の通りの雪道で、
ふつうのスエードのショートブーツだった私は、
奥まで歩いていくのを諦めました。
それでも、こんな風に十字架が立っていたりして、
祈りの場であることを感じました。
森を歩いていると、
青空が広がっているのに、
緩やかな風が吹くたびに木々が揺れ、
木々につもった粉雪が舞い散っていました。
青天なのに粉雪がちらつくさまは、
どこか幻想的で、
世俗からかけ離れた世界であることを、
強く感じさせてくれました。
風が木の葉を揺らす音以外には何も聞こえず、
まさに祈りや瞑想をするための場所だと思いました。
遊歩道から後ろを振り返ると
山肌に張り付くように建てられているのが、
よく分かります。
こちらは、宿に帰ってきてから見つけたポストカードです。
標高400mのところに作られており、
雪がなかったら、こんな風に見えるようです。
歩いているときに修道士さんに出会ったのですが、
英語のリーフレットをくれました。
簡単に説明してくれた後、
ゆっくりとした身のこなしで、
右手を自分の胸にあてながら、
「シニョーレ・ベネディクト」と言いました。
思わず、頭を下げながら、
「あ、ベネディクトさんですか」と言いましたが、
後でよく考えたら、
こういうときは私の名前を言うべきだったかもしれません。
こういうシチュエーションに慣れていないだけなのですが、
もしかしたら失礼な日本人だと思われたかもしれない、
と少し反省しました。
カルチェッリを後にして、
麓へむかって歩き始めました。
一本道なので迷うことはありませんでしたが、
坂が急なので、30分も歩いていたら、
なんだか膝が痛くなってきました。
休み休み、のんびり歩いていたら、
どんどん日が傾いてきてしまい、
最後のほうは休まずに頑張ってあるきました。
ほどよい疲労感を感じながらホテルに戻ると、
ちょうど夕陽が落ちるところでした。
これは、見晴らし室へ行かねば!と思い、
お茶を片手に見晴らし室へ急いだのでした。