「弱い」ではなく、「甘い」

昨日のブログにコメントをくださった皆様、
どうもありがとうございました ↓

自分としては一生懸命考えて、
がんばっていたつもりですが、
自分の視野が狭かったことや、
私の判断基準がブレていたことや、
冷静さに欠いていたことなどに気づきました。

優しいとか弱いとか言う以前に、
自分が何を守るべきなのか、
何を大切にするべきなのかといった、
価値判断の基準となるものが分かっていなくて、
その場で浮かんだ感情に流されていたことを
自覚しました。

このことに気づけて、自覚できたのは、
皆さんが貴重な時間を割いて
コメントを書いてくださったおかげです。

心から感謝しています。
どうもありがとうございます。

別荘として貸し出している実家で、
お客さんからのドタキャンが2件入り、
どちらもキャンセル料100%のところを、
「無料にしてくれ」と頼まれました。

キャンセルの理由は
「犬のけが」と「子供の病気」だったので、
思わず、無料でキャンセルを受けようと思った時、
友達の「あなた、ビジネスだって分かってる?」という
言葉が心に蘇って、一歩踏みとどまったものの・・・

お客さんに対して気の毒だと思う気持ちと
自分もローンを払わないといけないのだから
割り切らなくちゃいけないという気持ちの間で
葛藤していました。

昨日ずっと考えていて、
ほぼ「いや、心を鬼にしてキャンセル料をもらおう」
ということに気持ちが傾いていましたが、
実際にその手続きをしようとすると、
手が止まってしまうのです。

これではダメだ・・・と思った私は、
ちょっとズルいかもしれない と思いつつ、
背中を押してくれそうな人に
相談することにしました。

その人とは、Nさんです。

Nさんは私の恩人みたいな女性で、
近所に住んでいたこともあり、
前は頻繁に会っていたのですが、
彼女がロンドン郊外に家を買って、
引っ越してからは、たまに連絡を取るくらいでした。

Nさんなら、
きっと背中を押してくれるだろうとは思っていましたが、
相変わらずの豪快さと毒舌で、
私の葛藤を払拭してくれたのです。

Nさんに事情を一通り説明をすると、
こう言われました。

「まず、あなたは何も悪いことをしていないのに、
『罪悪感を持つ』という気持ちが理解できないわ」

Nさんの言い分は、こうです。

お客から大きなクレームが来たわけでもないのに、
新品のコンロやオーブンを設置したり、
ソファが壊れたとか水が流れないとか言われたら、
自腹を切って掃除人を派遣したりして、
大家としての責任は果たしている。

それならば、お客に対して
お客の責任を果たすことを期待するのは当然であり、
その責任は「予約」という名の契約に書かれている。

契約通りに履行するのは
お互いの義務であるから、
そこに感情を挟む余地はない。

「いや、そうは言っても人情というものが・・・」
と私が反論しかけると、
Nさんはピシャリと言いました。

「甘い!」

そして言葉を続けます。

「あなたのは『優しさ』でも『弱さ』でもなくて
『甘さ』なのよ。

いい? あなたは、甘いの。

だから、これまでも色々な人たちに舐められて
嫌な思いをしてきたんでしょ?

そして、その甘さは、
いつかあなたの命取りになるかもしれないから、
この機会にちゃんと直しておいた方がいいわよ。

私たちは夫も家族も親戚もいない外国で、
一人で生活を支えているの。

信頼のおける人もいるけれど、
最終的には、特にお金なんかは人に頼れないから、
自分の身は自分で守るしかないのよ。

だから、無闇やたらと無料にしていたら、
他の人の生活は助かるだろうけれど、
その分、あなたの生活に無理を強いることになるのよ?

大体、この時期に旅行に行こうなんて人は、
私たちみたいな一般事務員なんかよりも
生活に余裕がある人たちのはずよ。

やれ失業だ、戦後最大のレセッションだと言われている
このご時世に、家族旅行するくらいの人たちなのよ?

いつリストラされるとも分からない、
ただの一般事務員として働いてる私たちよりも、
ずっと安定していて、給料も良いはずよ。

あなた、自分基準で判断して考えていたでしょう?

『キャンセル料を払ったら苦労するだろう』なんてことは
私たち庶民レベルなら至極もっともだけど、
今時、旅行に行くような人たちにしてみたら
『はした金』程度のものかもしれないって思わないの?」

確かに・・・・

この不景気の真っ只中に旅行に行くくらいですから、
私なんかよりも生活に余裕があることは確実です。

そんなことを考えている私を他所に、
Nさんは、さらに続けます。

「だいたい、前にもキャンセル料を取り損ねて、
400ポンド(約6万円)くらい損してなかったっけ?
ちゃんと過去の経験から学習してるの?」

う・・・、痛いところを突かれました。

「甘さ」かぁ・・・と思って、
深い溜息をついた私に、
Nさんはこう言ってくれました。

「AirBBなんて、あなたの性格からすると、
かなり無謀というか、
向いていないことをしているんだから、
失敗や葛藤があっても当然なのよ。

でも、そこから何を学ぶか?
どうやって自分を変えていくか?の方が大事なの。

そのためには『なんのためにしているのか?』とか、
『最終的に、自分はどうしたいのか?』みたいな、
確固たる目的を定めて、
それにフォーカスするしかないと思うわ。

キャンセル料を100%もらうなんて、
慣れないことだし、
気持ちが進まないのも分かるわよ。

だって、それは Out of comfort zone 
(心地の良い領域の外にあるもの)だもの。

でも、自分の生活を守るために、
Comfort zone (居心地のよい場所)に
居続けるわけには行かないのであれば、
そこに選択の余地はないの。

あえて選択があるとしたら、
諦めるか、前に進むかの二択だと言えるけれど、
あなたの場合は、
諦めたらローンが払えなくなる可能性があるから、
その選択肢は無いに等しいでしょう?」

・・・まさに、その通りです。

もともとのNさんの性格もありますが、
お互いのことをよく知っているだけに、
歯に衣着せぬ物言いです。

でも、それだからこそ、
ひとつひとつの言葉に
反論を挟めない説得力があります。

それに、私の気持ちを慰めるために、
適当な口先だけのことを言っているわけではないことも、
Nさんの性格を知っているだけに、よく分かります。

確かに「自分基準」で考えていました。

言い訳のようですが、
日本だと「相手の立場になって考えなさい」
と教育されますよね?

多分、この教育が尾を引いているのだと思います。

相手の立場になるのは良いのですが、
自分の価値基準のまま相手の立場に立っても、
全く見当違いな結論に至ってしまいます。

『相手の立場に立つ』なら、
価値基準も相手のものにしないとダメなわけです。

今回の場合、相手の価値基準が分からないので、
相手の立場になって考えることはできませんが、
私と同じ価値基準かどうかが分からない以上、
それは切り捨てて考えるよりほかなく、
考えても仕方がないことなのだと思います。

Nさんは相変わらずの毒舌ではありましたが、
なんだか気持ちが吹っ切れました。

弱さではなく、甘さ。

この言葉が、心に沁み入りました。

私は、一人でこの国で生きていくと決めたのだから、
そのために甘さを克服しなければならないのであれば、
その道を辿るしかなく、他の選択肢はありません。

それでも、なんとなく罪悪感と言いますか、
悪いこと(人を苦しめること)を
しているような気持が拭いきれず、
悶々としていたときに
皆さんからのコメントを読みました。

読んでいるうちに、
キャンセル料を取るのは普通のことだ、
と思えるようになりました。

自分が守るべきものを守るために行動する。

優しくするなら相手を選び、
ズルをしない人にしないと自分が不幸になる。

自分のことだけでなく、
もっと広い視野に立って物事を考える。

これまでは考えたこともなかったのですが、
今後は、こういうことを心がけてながら
頑張っていこうとおもいます。

実はもう1つ、
解決しなくてはいけない問題があるのですが、
こういった考え方を基本スタンスにすることで、
踏ん切りをつけられそうな気がしてきました。

心を強く持って、
感情に流されずに、冷静に行動して、
がんばっていこうと思います。

みなさん、どうもありがとうございました。


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この記事へのコメント

  • たま

    Nさんの意見に同意します。客観的にも明らかに損していますよ。
    ビジネスだからビジネスライクにやっていかないとね、利益出すためには犠牲にすることも必要だよ!
    ガンバ!

    2020年08月20日 04:41
  • たいふのげん

    こんにちは。
    わたくしはここに集う皆様のように、きちんとした人間ではありません。
    古文でいう、あやしきやまがつ、です。

    大好きだったオートバイ三台も手放し、好きな、
    黒猫・にわとりちゃんを飼う事もできません。

    でもダメンズにはダメンズの視点があります。
    イチイ様、イギリスに大地震や超巨大台風は無いとしても。
    新型コロナという大嵐が来てしまったわけでございますよね。

    それに対して皆様は、Air BB で異民族と戦えと仰る。
    けれども二十代の頃のお友達が注意してくれたように、
    イチイ様はあまりに人に親切になさいますから。本当の友達の恩義に報いる事にはならず。誤解されかねないほどお優しいのですよね。

    ビジネスだから乗り越えて行きなさいと皆様は仰る。
    けれどもわたくしは皆様に嫌われるのは覚悟で。申します。
    実家も Air BB も全てを売り払い、身軽になるべきでは、ないでしょうか。

    コロナで世界が変容してしまったのです。

    イチイ様だってコロナにかからないとは、断言できません。
    実家や Air BB を解約して売却する事じたいが、あらたな経済負担を負うことになるかもしれません。

    日本も新型コロナにかかる人はふえていますが。なくなった人の数は欧米ほどではありません。でも帰国なさっては?とはもう申しません。
    ですけれども。

    いったん、全てを手放し、身軽になってはいかがですか?
    上手に解約とか売却をしてくれる企業はきっとどこかにあって。
    スマホやパソコンで探せばきっと見つかるのでは?
    2020年08月20日 19:11
  • ミルモ

    イチイさん(^o^)/

    今回の事は必ず次に、いい教訓になります。お客さんに気を使うとか、良くしてあげたいとかね、それはビジネスでも良い事だと思うの。でも契約通りの料金やキャンセル料は、ちゃんと請求しないとね。
    数万円は大きい額です、何回も同じ事があれば凄い額になります。引けない事は通さないと。次に繋げましょう(*^-^*)
    イギリスで一人で生きて行くのは、私なんかが想像も出来ないぐらい大変です。
    でもイチイさんは、その暮らしを守らないといけません。先で困らないようにね、その準備もしとかないと。手に入れた物を守るのは、とても大変です。無くさないために頑張ろう、イチイさんは負けません。
    ・・・またね。
    2020年08月20日 22:57
  • コンロ

    こんにちは。
    最近の日本でも、キャンセルが色々問題になっています。
    お店側のことなんて考えないで、勝手にキャンセル。
    キャンセル料を貰おうものなら、客側が逆切れして
    「SNSに書き込んでやる!!」
    「評価を最悪にしてやる!!」
    と実際行動に移して、逆に客側の方が炎上・・なんてこともあったり。
    日本人特有の優しさが利用されている感じが最近日本でも、見直されてきている感じです。
    私もNさん同様もらうものはもらう、払ってもらうものは払ってもらう。
    それがいいと思います。
    2020年08月21日 19:00
  • ココレイコ

    イチイさん、こんにちは。
    今回の件ではいろいろ学ばれているようですね。
    外国で、さらにビジネスをする上では感情論は持ち込まない、そのためにポリシーがあると割り切らないと続けていくことは難しいでしょう。
    日本の相手の立場に立って云々も、イギリスやアメリカでは相手に都合よく使われて、相手はイチイさんが困った状況になっても平気で知らぬふりで終わるケースが一般的だと思います。イチイさんを思ってくれている人たちを吟味して思いやるのは必然かもしれませんね。
    キャンセル料や割引など、ポリシーに基づいて断ることを続けていくうちにご自分の中でそれがスタンダードになっていくと思いますが、それもビジネスを続ける上で必然であり、相手を苦しめているとご自分を責めるのは違うと思います。
    まずはイチイさんの生活や幸せを守ることに徹して、その後から助けてくれた周りの人たちにできる範囲の感謝を伝えればいいのだと思います。
    応援していますね。
    2020年08月21日 23:40
  • イチイ

    たまさん、ありがとうございます。
    今回のことでは、いろんな意味で考えさせられました。そして、人によく思われたいという気持ちが無意識のうちに働くという自分の弱点も痛いほど分かりました。犠牲が必要だとおっしゃることも、よく分かります。何を捨てて、何を得るか・・・その選択を間違わないようにしたいと思います。
    2020年08月22日 00:37
  • イチイ

    大夫の監さん、コメントをありがとうございます。
    今から実家を売り払うことはしません。それをしたら、このイギリスで努力してきたこと全てを自ら否定することになり、これまでの血の滲むような努力と苦労が、全て無に期してしまうからです。努力してようやく手に入れたものを、自ら手放すことだけはしたくありません。
    コロナで死ぬなら、それまでのことです。生きていても辛いことが多いので、死んだ方が楽だとすら思う時が多々あります。悲しいことに細々とでも生きていきたいと思えるほどの人生を送っていませんし、日本でもイギリスでも苦労は同じです。むしろ、日本にいた方が周囲のめが辛くて、生きていくのが大変でした。
    別に余計な苦労を背負い込みたいと思っているわけでもありませんが、かと言って楽に生きていきたいわけではないのです。私は、私なりに頑張っていくしかないと考えています。
    2020年08月22日 00:42
  • イチイ

    ミルモさん、ありがとうございます。
    その後も、キャンセル料を無料にというリクエストはないものの、チェックアウト時刻を早めにとか遅めにリクエストする人が後をたちません。繁忙期のため掃除人を確保することすら難しいので、そう言ったリクエストを聞けない時もあります。
    今日は、11時チェックアウトを午後2時にしてくれと言ってきた人がいました。数日前の私だったら、色々と考えて掃除人さんにお願いして・・・・としていたと思いますが、深く考えることなく、「午後4時には次のお客さんがくるので無理です」と返信することができました。こういうのも「慣れ」なのかもしれませんね。最初の一歩は辛くても、今回のことで大きな痛みを持って学ぶことができたので、これからはお客からのリクエストに対して、少しだけ楽に対応することができそうです。頑張りますね。
    2020年08月22日 00:47
  • イチイ

    コンロさん、コメントをありがとうございます。
    今回のことは、良い勉強になりました。評価は脅しにもなりかねないのですね。確かに評価が低いと Air BB に掲載してもらえなくなったりしますので、脅しの手段としては有効なのかもしれませんが、それを恐れて言いなりになる人(私もそうなりそうでしたが・・・)がいたからこそ、そういう人が横行するようになったのでしょうね。
    お客を100%満足させられることはできなくても、真っ当なビジネスをしていたら、それを理解してくれたお客さんは離れないでいてくれると信じて、頑張ります。
    2020年08月22日 00:50
  • イチイ

    ココレイコさん、ありがとうございます。
    おっしゃる通り、この国では相手に都合よく使われて終わりなのだと思います。感情は捨て、ポリシーに従って淡々と受け付けるようにしたいと思います。思いやりを向ける相手は吟味し用途思います。
    「ポリシーに基づいて断ることを続けていくうちにご自分の中でそれがスタンダードになっていくと思います」というお言葉、まさに実感しています。最近、Early check in や Late check out を希望する人が多くて、前は「申し訳ないな」と思ったり、掃除人に無理を言って掃除を早めてもらったりしていましたが、昨日からはそのような「無理」をすることなく、ポリシー通りに淡々と断っています。もちろん、対応できそうなところは対応しますし、言葉遣いには気を付けていますが、いちいち感情を揺さぶられることはなくなりました。色々と大変ですが、頑張ります。
    2020年08月22日 00:55
  • じゅん

    イチイさんお久しぶりです。
    一連の記事読みました。
    とても心が揺れ動いていて、私はNさんも言う通り、イチイさんは客商売本当は向いてないんだなと思いました。

    それでも右往左往しながら果敢に取り組むお姿は立派だと思います。
    いいお掃除やメンテナンスしてくれるご夫妻に出会えたことは幸運でしたね。
    またお人柄か、いいお友達にも恵まれているようですし、羨ましいです。

    私はビジネスのことはわかりませんが、確かに赤字を出し続けて生活が破綻したら本末転倒だと思いました。
    それよりも気になったのは、イチイさんが他人の目を異常に気になさってること。
    またそのせいで、周りの人(叱ってくれるような親切な友人以外の人)に舐められてしまい、軽くあしらわれる事態に陥らないか心配なことです。

    欧米では日本に比べて他人の目よりも自分の意思を尊重する社会かなと思います。
    それが時に冷たさに感じるのかもしれませんが、日本人が他者に親切にする文化なら欧米は自分を大切にする文化なのでは。
    辛い生い立ちなのは折に触れてわかりましたが、イチイさんは文化の違いもさることながら、言いづらいですがご自身の自信の無さ(自己評価が低い)が原因なのではないかと思います。
    人にいい人だと思われたいと言う欲求が強い、承認欲求の現れだと思います。

    私自身のことですが、私も若い頃仕事は好きだが自分がどう生きたいのかわからなくなった時、しばらくカウンセリングに通いました。
    カウンセリングで子供の頃にあった辛いことを泣きながら話すうちに、気持ちが楽になり、今の自分に自信が出ました。
    仕事にプライドも持つと、優先順位にも自信が持てて言い辛かったことも言いやすくなりました。
    イチイさんはサバイバーですよね、私もそうです。
    もう、人からの評価を気にしない人生を謳歌しましょう!
    2020年08月22日 08:38
  • イチイ

    じゅんさん、コメントをありがとうございます。
    実は、私も今回のことでは「なんでこんなに、しかも会ったこともない人に『良い人』と思われたいと思うんだろう?」と我ながら不思議に思いました。承認欲求の表れなのですね。そう聞いて、なんだか納得してしまいました。今の自分に自信を持つための方法がよく分かりませんが、今は少しでも自分を好きになろうと努力しています。
    カウンセリングを受ければ自分に自信が出るようになったり、自分を好きになれるのでしょうか。頑張っても、あがいても無理なときは、そういうことに頼るのも一つの方法かもしれませんね。私はしがない事務員だし、何の特技も資格もありませんが、いつか じゅんさんみたいに人の評価を気にしないで生きていけるようになりたいものです。
    2020年08月25日 03:09