カミングス氏 イギリスの反応

昨日、ドミニク・カミングス氏のことを書きました ↓

案の定、昨日の会見で納得できなかった人たちが
いろいろと騒いでいました。

BBCによると、寄せられた意見のうち71%が
カミングス氏は辞職するべきだと言っているそうです。

「私は子供を守るためなら、なんだってする」と言って、
カミングス氏を擁護する声もあったようですが、
大半はカミング氏は Alogant(高慢)で、
ルール違反をしたのに謝りもしない、
という批判的な意見のようです。

「子供を守るためだったら、なんだってする」
という意見は、私には新鮮でした。

母として、親として、
子を守るのが人生における優先順位のなかで
トップを占めるのかもしれませんが、
それはあくまで『あなた』の優先順位であって、
皆がそんなふうに自分の優先順位に従って行動していたら、
社会なんて、あっという間に破綻してしまいます。

感情的には理解できますが、
そんなことを言いながら、
児童手当などを受け取っているわけです。

社会の恩恵を受けるのであれば、
その社会のルールに従うのは当然のことだと思うので、
社会の恩恵だけを享受しながら、
好き勝手に行動する人は
その社会で生活を営む資格はないんじゃないかしら?
とすら思いました。

でも、だからといって他の社会で生きていくという
選択肢があるわけでもないので、
こればかりは仕方がないのかもしれません。

それに「あなたには子供がいないから分からないのよ」
と言われてしまえば、
そういうものなのかもしれない気がします。

今日は、色んな反応が見られて、
ニュースから目が離せませんでした。


まず、今朝の緊急ニュースとして報道されたのが
スコットランドの若い議員の辞任です。

ダグラス・ロスさんという議員で、
最初は「なんで、あなたが辞めるの?」と思いましたが、
自分が辞めることで首相に問題提議したかったようです。

彼は保守党の若手ルーキーと目されていたようで、
自分もロックダウンを守って
大切な人のお葬式に行けなかった経験に触れて、
こんなことを言っていました。

I cannot in good faith tell them they were all wrong and one senior adviser to the government was right.

(私は、愛する人を喪っても葬式にすら行けなかった人たちに対して、一点の曇りもなく本心から『あなたの行動は間違っていた。政府の上級顧問が正しかった』などとは言えない)

37歳という若さから感情的になったのかしら?
とも思いましたが、
たとえば長年連れ添った配偶者など、
愛する人が亡くなっても
その場に立ち会うどころか
葬式にすら行けなかった人たちの立場になって考えると、
カミングス氏の発言は、
政府の言いつけを律儀に守っていた彼らに対して
こう言ったも同然です。

「あなたは間違っていた。
葬式に行けたのに、行かない決断をしたのはあなただ」

亡くなったという事実は、取り返しがつきません。
ひどく後悔しても、
今から死の床へ駆けつけることはできないのです。

ロス氏の行動が感情からなのか
人心掌握のための戦略なのかは分かりませんが、
少なくとも、彼の言葉に自分の境遇を重ね合わせて、
共感を覚えた人は多いと思います。


次に驚いたのが、
毎日5時から放送される政府の生放送会見です。

まず、今日はボリスさんが出ていませんでした。

代わりにドミニク・ラーブ保険相が出ていましたが、
相も変わらずカミングス氏の主張を支持し、
Reasonable(妥当な)行為だと繰り返していました。

そして、会見の後に質疑応答があるのですが、
案の定、記者からの質問は
カミング氏の行為に関することばかりでした。

そして、質問に対して答えると、
追加の質問をシャットアウトするかのように
「次の質問は、XXさん!」と言って、
早く質疑応答を終わらせたい様子が見て取れました。

そんな風に せわしない質疑応答の中で、
ある記者がこう聞いたのです。

「カミング氏が子供を世話するために
ルールを犯したことが許されるのであれば、
これまで子供の世話をするためにルール違反をして、
罰金を払わされたケースについて、
対応を見直す予定はありますか?」

私も昨日、『罰金を取られた1万人近くの人たちが
「罰金を返せ!」と言いたくなるんじゃないかしら?』
と書きましたが、まさにそんなことを聞いていたのです。

するとラーブ氏は、こう答えました。

Good question.....
I will have to talk to my Tresury colleagues before I can answe it in full, and I will look at it and if we can get your details we will make sure we write to you with the full answer and make an announcement from this podium.

(その質問に答えるためには、まず財務省スタッフと話さなければならない。もしあなたの連絡先を教えてくれたら後日正式に回答しますし、その内容はこの場でアナウンスします)

財務省に確認すると言っていましたが、
カミング氏が罰金を払わずに済むのであれば、
「子供の世話(Child Care)のため」にルール違反をして、
そのせいで罰金を払わされた人への返金もあり得ます。


さらに面白かったのが、
カミングス氏は会見のときに
「バーナード城へ行ったとき、一人の老人が自分に気づいた」
と言っていたのですが、
その『老人』がラジオのインタビューに出ていたのです。

かつて教師だったというその男性は、
バーナード城でカミング氏らしき人と
地元のナンバーとは違うナンバープレートをつけた車を見て、
「なんで、ロンドンにいるはずの人がここに?」と思い、
車と横に立つカミングス氏の写真を撮ったのだそうです。

後日、カミングス氏がダーラムにいたらしいという記事が
新聞に掲載されていたのを目にして、
「いや、そんなはずはない。バーナード城で見たのだから」
と思い、携帯で撮った写真を新聞社へ送ったそうです。

会見中にカミングス氏が、
なんで わざわざ「一人の男性に気づかれた」
と言ったのか不思議でしたが、
写真を撮られたことを知っていたために、
あえて そのことに触れていたのだと分かりました。

また、うがった見方をすれば、
お城でもっと時間を過ごそうと思っていたけれど、
写真を撮られたことに気づいて、
長居せずにその場を後にしたのかもしれません。


その他にも、
本人曰く「コロナウイルスの症状があった」という4月3日、
子供が花粉症の治療で病院へ行ったときに、
奥さんと子供を迎えに車で病院へ行ったことも分かりました。

仮に、バーナード城という観光地への
往復74kmの試運転がルール違反ではなかったとしても、
今も当時も「症状のある人は家から出るな」
というのがルールですから、
これは明らかなルール違反です。


罰金問題といい、
新たなルール違反の発覚といい、
一人のスタンドプレーが
様々なところに波紋を生んでいて、
少しずつ綻びが出てきているような気がしました。

仮に、これでイギリス政府が
罰金の返金を決めたとしたら、
私はきっと政府に対して不信感を抱くと思います。

『一人のために法を曲げる』とか、
『一人のために法の解釈を変える』などということは
民主主義の世界では、
あってはならないと思うからです。

そんなことが許されるなら
独裁政権と同じです。

現在、40人の議員がカミングス氏の辞職を支持していますが、
その一方で、複数の議員が彼を擁護しています。

でも、擁護派の言い分は説得力が弱く、
ニュースキャスターに質問されても明確な答えができず、
けむに巻くような回答か、
「親としては、子供は何よりも優先されるべき」
という感情論に終始しています。

なかには「法の解釈や判断は人によって違う」と言った、
若い女性議員もいました。

つまり、この議員は「あなたの基準で判断して、
一方的にカミング氏を責めるのはおかしい」
と言いたかったようです。

でも、これを聞いたとき、
「そういう勝手な判断を規制するために
法を制定しているのでしょう?」
と首をかしげてしまいました。

とはいえ、辞職派の言い分を聞いていても、
人によってはコロナウイルス対策よりも、
Witch Hunt(魔女狩り)に精を出しているようにも見えるので、
どっちもどっちかな?という気もします。

いずれにせよ、このままでは済まないと思います。

前にも同じことを言いましたが、
日本にいた時は
政治なんて興味がありませんでした。

でも、イギリスの政治は生き生きとしていて、
ときに生々しい人間ドラマのように思えたり、
場合によっては国民の意見が反映されることもあるので、
興味が尽きません。

自分に選挙権がないのが残念なくらいですが、
逆に選挙権がないからこそ、
こうして高みの見物を決め込んで
言いたい事を言ってられるのかもしれませんね。

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この記事へのコメント

  • BlueDal

    カミングス氏のこと、こちらの大手新聞にも書かれていました。
    ん?おかしいな と思って彼の写真を撮った男性の速やかな行為に感心するというか・・・私なら「本当に〇〇さんかな・・・隠し撮りしていいのかな」なとグズグズ考えてしまう。
    日頃からよく写真を撮る人なら、慣れでスッと体が動くのでしょうね。
    日本では、芸能人が旅行に行った・飲み会していたということが話題です。
    「皆が我慢しているのに!」という怒りは、世界共通ですね。
    2020年05月27日 13:50
  • イチイ

    BlueDalさん、コメントをありがとうございます。
    私も、他人の写真を撮るのは気が引けてしまうと思います。でも、イギリス人の友達に聞いたら、そんな有名人が違反しているのを見たら警察かマスコミに報告するために写真を撮るのは当然だというような事を言われました。話をしていたら、どうやらご近所の人たちのことを通報しているケースが多いみたいです。色々と考えるところがありましたので、このことはまたの機会にブログに書くかもしれません。
    2020年05月27日 18:34