自分が何をしたいか、どうなりたいか?

今日、Sadler's Wells というシアターに
Akram Khan のトークを聞きに行ってきました。

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チケットが10ポンドで自由席と聞いていたので、
開演30分前に行きましたが、
開場したのが開演時間の5分前でした。

この国には「整列乗車」という習慣がないため、
せっかく早く行ったのに、
入口付近でモサッと溜まっている人たちに圧されて
結局、後から入場することになりました。

でも、幸いなことに、
前から3列目に1つだけ席が空いていたのです。

グループで来ている人ばかりだったので、
1席だけ残っていたようです。

中央通路側だったので、
話者がよく見えて、とても良い席でした。

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こんなふうに遮るものがなかったので、
とても快適でした。
(写真に写っている人はスタッフです)


今日のトークは、振付家のアクラム・カーンと
ダンサーのマーヴィン・コーのトークです。

以前、戦争をテーマにしたバレエを観に行ったことを
覚えてらっしゃいますでしょうか。

このときの、3幕目のバレエを創作したのが、
アクラム・カーンです ↓

この時の印象が強くて、
ステージを観たその日の夜に
彼のステージがないか探してみたら、
今日のトークショーを見つけたのです。


ダンサーと振付家のトークなので、
抽象的で芸術的な話なのかと思いましたが、
良い意味で期待を裏切られたトークでした。

2人とも、ぱっと見た感じは普通の人でしたが、
やはり何かを成し遂げるだけのことはあるなぁ、
と感心するような、
しっかりした考えをもった人たちでした。

アクラム・カーンは穏やかな口調で話す人で、
話す内容も足が地に着いたコメントが多く、
ダンサーとか芸能人といった言葉から連想される、
浮ついたところや驕りは、
一切感じられませんでした。

ダンサーのマーヴィン・コーは、
インド生まれで、
インドで厳しい舞踏訓練を何年も受けていたそうで、
動きはしなやかなのに、
まるで武道家のような印象を受ける、
芯の通った言動をする人でした。

インドで10歳から先生とのころに住み込みで
7年間インドの舞踏を学んだそうです。

話を聞いていると、スポ根ドラマみたいなことや、
単なるイジメじゃない?と思ってしまうような
理不尽な修行もあったようです。

しかし、そういう厳しい修行を耐えてきた、
という確固たる自信が、
今の彼を支えているのかもしれません。

そして、トークの最後に、質疑応答がありました。

観客席にいた若い女性が手を挙げて、
こんな質問をしていました。

「私はインドのバラタナティヤムを習っています。
ロンドンでも(インドの)マドラスでも、
次世代のダンサーたちに対する支援が
ないように感じています。
それについて、どう思いますか?」

バラタナティヤムというのは、
南インドの古典舞踏だそうです。

それに対して、アクラム・カーンも
マーヴィン・コーも、
こんなことを話していました。

「僕たちは自分たちがやってきたことを
次の世代に受け渡すだけだ。

そして、それを受け取るかどうかは、
君たち個人の問題だ。

僕たちも先代の人たちから、
そうやって受け継いできたのだから」

怒るでもなく、見下すでもなく、
淡々とそう話している2人を見て、
自分たちが歩んできた道に対する
自信のようなものを感じました。

そして、自分のできる全てを出し切る前に
他者からの支援を求めている若者たちに
こんな風に言っているようにも感じました。

「自分でしっかり考えて、
目的に向かって歩み続けなさい」

と言いますのも、この質問に先立って、
マーヴィン・コーが、
こんなことを話していたのです。

「まず、自分が何をしたいか?
自分がどうなりたいか?ということを、
しっかりと考えなさい。

それが分かったら、
次に、それに至るための道筋を明確にすべく、
じっくり考えなさい。

その道筋は、実現可能なものでないといけないし、
その先に続くような、
建設的なものでなければいけません。

その道筋が分かったら、
あとは迷わず、その道を進み続けなさい。

どんなに理不尽なことがあっても、
歩み続けるのです」

この言葉を聞いたとき、
若くしてインドを出て、
異国の地であるロンドンで
ダンスカンパニーを率いるまでになった
マーヴィン・コーの強さと
自らが費やしてきた努力に対する自信を感じました。

嫌味なところも、
高飛車なところもありません。

淡々と、力強い口調で、そう言うのです。
私も、若い頃にこの言葉を聞きたかったです。

何十年も、先のことなど考えずに
漫然と生きてきた結果が、今なのです。

今から10年後の自分は、60歳です。

質問をした若い女性のように、
ダンサーになるという夢など、
体力的に叶わない事も沢山あると思います。

それでも、今が残りの人生で一番若い日なのだから、
私も、何か考えてみよう。

そんな風に思いました。


とはいえ、シアターからの道すがら、
「60歳の自分がどうなっていたいか?」
ということをずっと考えていたのですが、
何も思いつきません。

「うー、これじゃダメだ!」と
頭を掻きむしりそうになったとき、
ふと思い出しました。

そんなに広くなくていいから、
大好きなバラが沢山植わっている庭で、
花木の手入れをしたいなぁ・・・

夢や目標などと言うほど
大それたものではなくて、
漠然とした願望に近いのですが、
マーヴィン・コーに言われた通り
よく考えて、考えて、考え抜いて、
この願望をもう少し育ててみたいと思います。

この記事へのコメント

  • ペンギン

    何時もいろいろな芸術やショウを楽しまれて、とても良い事だと思います。最近はすっかり面倒くさく出不精になっています。

    イタリア人の方は残念でしたね。年の差があっても誠意のある方だったらありなのかもしれませんが、イチイさんにはきっともっと素敵な方が表われるかもしれませんよ。アラフィフだからそれでいいなんて事は絶対にないと思います。

    応援しています!


    2018年11月25日 12:13
  • イチイ

    ペンギンさん、ありがとうございます。
    イタリア人の人は、特になんとも思っていないので大丈夫です。ご心配、ありがとうございます。私の場合は、かつてが出不精だったので、今はその反動で動いているのかもしれません。それに、なんとなく一人で出歩くのに慣れてきたような気がします。休憩のペースとか人のことを気にしないで出歩けるのは気楽なので、かえって出歩くことが増えたのかもしれません。
    2018年11月26日 07:04