天使と旅した少年

最近、毎週金曜日に仕事を終えたあと、
ナショナルギャラリーに足を運んでいます。

実は、なぜか昔から13世紀の宗教画が好きで、
本を読んだり、色々と調べているうちに、
だんだんとルネッサンス時代の宗教画にも
興味をもつようになりました。

20年くらい前にイギリスに短期留学していたころ、
ナショナルギャラリーが大好きで
暇さえあれば絵を観に行っていました。

ここに来ると、あの頃の自分、
この先どうなるか分からなくて
不安ばりだった自分が抱えていたいろいろな気持ちを
思い出します。

すっかり忘れていた気持ちや、
実現できなかった夢などを思い出したりして
ときに悲しくてやりきれなくなることもあるのですが、
それでも、好きな絵を見て、
色々と考えを巡らせていると時が経つのを忘れてしまいます。

今日は、そんな私の好きな絵のひとつをご紹介します。

こちらです。

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この絵は、ヴェロッキオが描いた、
天使と旅をする少年の絵です。

ここに描かれているのは、
大天使ラファエルです。

新約聖書にラファエルは出てきませんので、
この旅のエピソードは
旧約聖書に載っているお話です。

旧約聖書のお話は物語性に富んでいて、
人間臭い物語があったりして、
普通の読み物として楽しめるため、
高校生の時に初めて読んでから、
なんどか読み返していました。


トビアスは盲目である父の目を癒すため、
アザレアという少年とともに、
妙薬を探す旅に出ます。

実は、アザレアの正体は大天使ラファエルで
彼はトビアスを守りながら旅を続けます。

ついに目を治療する薬、
魚の胆のうを手に入れたトビアスは帰路につくのですが、
この絵はそんな様子を描いています。

トビアスは左手に魚を持ち、
ラファエルは目の薬が入った小箱を手にしています。

足取り軽く帰路につくトビアス、
まるでスキップでもはじめそうなくらい
弾んだ足取りを見ると
私まで気持ちが明るくなります。

そして、並んで歩いているラファエルに
嬉し気に話しかける様子、
まるでトビアスの得意げな声が聞こえてくるようです。

「ね、アザレア!これでお父さんの目が治るね!!」

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アザレア(ラファエル)に呼びかけるかのように
絡めたトビアスの右手を見ながら、
「きっと、この2人は
とても仲の良い友達同士なんだろうな」
などと想像したりして、見ていて飽きません。

ほんの一瞬をとらえた絵ですが、
夢見るような、まどろむような、
あたたかな色調の田園風景を背景にして、
トビアスの喜びが画面全体から滲み出してくるようです。


この絵を描いたヴェロッキオには、
若き日のレオナルドダヴィンチが師事していました。

そのため、ラファエルの足元に描かれている
フワフワの子犬を描いたのは
レオナルドダヴィンチだと言われています。

この絵を説明するガイドさんは
必ずそのことを説明しています。

そして、それを聞いた人たちが「ほほぅ」と
一様に感心している様子を見ると、
まるで、「この絵の価値は、
レオナルドダヴィンチが手を加えたことにある」
という一言に集約されてしまうような気がして
少し残念に思います。

この絵から感じる温かさや喜び、
浮きたつような気持ち、
そういう高揚感こそが、
私がこの絵を好きな理由なので・・・

携帯で撮った写真では伝わらないかもしれませんが、
気持ちが温かくなって、
思わず「お父さんの薬が見つかって、良かったね!」
と声をかけたくなるような絵なのです。

いつか、チャンスがあったら
ぜひ本物の絵を見てみてください。

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