パリのマレ地区にあるビストロに行きました。
時間通りに現れた元同僚女性は
流暢なフランス語でウェイターさんと話した後、
今日のおすすめ料理などを私に説明してくれました。
「今日のお勧め料理はラム肉だって」
そう言われた直後、
まるで日本語が分かるかのように、
ウェイターさんが私たちのテーブルの横を通りかかり、
他のお客さんのところに持っていくところだった
ラム肉の煮込みソテーを、
私たちの目の前に差し出しました。
「これが今日のお勧めだよ!」
にっこり笑いながら、
フランス語なまりの英語で教えてくれました。
とても美味しそうでしたし、
フランス料理には疎いので、
説明されてもどんな料理か想像がつかなかったので、
その本日のお勧め料理を注文しました。
お料理を待っている間、
周りを見回してみましたが、
日本人は私たちだけでした。
地元の若い人たちが多く、
時折楽しそうな笑い声が聞こえてきたり、
大袈裟なジェスチャーを交えて話している人がいたり、
がやがやと賑やかな雰囲気で、
いかにもパリのビストロという風情でした。
元同僚の女性と近況報告をしたり、
パリでの生活や最近の街の様子などを聞いているうちに
お料理が運ばれてきました。

こちらのラム肉、
とてもよく煮込まれていて、
脂身部分などはフォークでつつくと
ほろほろと崩れるくらい柔らかいのです。
煮込んだ後にフライパンでさっと火を通したようで
肉の端のほうはカリカリしていました。
柔らかい中央のお肉、ホロホロの脂身、
そして周辺部分のカリカリしたお肉と、
1つのお肉なのに食感の違うものが混在していて、
口に含むたびに微妙に味が違うように感じられて、
食べるのが楽しい!と思えるお料理でした。
味だけでなく、食感も楽しめて、
なんて良く考えられたお料理なんだろう!
と、感動しました。
こういう調理ができるのは、
やはりプロの技なのでしょうね。
家で再現するのが難しそうな味だったので、
こういうお料理なら、
わざわざお金を払って食べに行く価値があると思いました。
デザートは、アップルタルトのようなケーキでした。

リンゴのスライスが載っていますが、
その下はフラン(プリンみたいな食感のカスタード)で、
キウイのソースが添えられていました。
しかも、このキウイソースとの組み合わせが絶妙なのです。
やや酸味のあるキウイソースは、
甘さ控えめのタルトの甘さをより引き立たせてくれて、
お互いが、お互いの良さを引き出すようなコンビネーションでした。
こういう、頭を使ったお料理と言いますか、
クレバーな(賢い)お料理は、
あまりイギリスで見かけない気がします。
もちろん、ロンドンでもフランス料理屋さんに行けば
こういうお料理があるのでしょうが、
パブのような、いわゆる一般的な定食屋さんで提供されるものは、
メインの一品料理(肉や魚)に、
付け合わせ(サラダか、ニンジン・ブロッコリ・ポテト)があるだけで、
良く言えばトラディショナル、
悪く言えば、いつも同じような組み合わせなのです。
こういう「お互いがお互いの良さを引き出す」といった、
お料理の構成を考えられたものは、
普通のパブではお目にかかることはできません。
パリの手頃なビストロ(定食屋さん)ですら、
このレベルのお料理が提供されるなんて、
やっぱりフランスはグルメの国なのですね。
しかも、メインとデザートの2皿で、
たったの20ユーロ(3千円弱)でした。
日本円で3千円弱と聞くと高いかもしれませんが、
ロンドンでは、パスタ1皿分の値段です。
私にとって20ユーロは決して安くはありませんが、
ロンドンでメインとデザートを食べたら
その倍の値段はするであろうと思われるので、
かなりコストパフォーマンスが良いと思いました。
こんな風に、安くて美味しいお店に来れたのは、
パリに住んでいる元同僚のおかげです。
私一人だったら、
その辺の適当なレストランに入って・・・
と思いましたが、よく考えたら、
一人だったら、レストランに入る勇気すらなかったと思います。
外は冷たい風が吹いていましたが、
ビストロの中は熱気にあふれていて、
私が想像していたとおりのパリでした。
こんな素敵な経験ができたのは、
元同僚のおかげです。
いつか彼女がロンドンに来た時には、
私もロンドンらしいお店を紹介できるようになりたいな・・・
などと思いつつ、
また次回の再会を約束して、
レストランを後にしたのでした。
この記事へのコメント
リラ
イチイ
ほんの1週間前のことですが、本当に楽しかったです。現実の忙しさに、なんだか1週間以上たっているような気がしますが・・・