ジョン・コンスタブル 絵画と実際の風景の比較

もう1か月以上前のことですが、
イギリスの有名な風景画家である
コンスタブルの故郷に行きました。

今日は、そのときのことを書かせてください。
(こちらのブログの続きになります ↓)
http://yewtree.seesaa.net/article/450815763.html


ジョン・コンスタブルは
18世紀から19世紀にかけて活躍した風景画家で
かの有名なターナーと同時代に生きていた人です。

ターナーは若くして人気を博し、
24歳にしてロイヤル・アカデミー準会員となり、
27歳のときに正会員となった画家です。

しかし、コンスタブルのほうは43歳で準会員となり、
正会員になれたは10年後の53歳のときでした。

つまり、同時代に活躍していたとはいえ、
当時のコンスタブルはさほど注目されず、
今でこそイギリスを代表する風景画家と言われていますが
当時は、ぱっとしない画家だったのです。

それを証明するかのように、
彼の生前に売れた絵画は
たったの20枚だったそうです。


コンスタブルが活躍した時代は
ちょうど産業革命が起こって
鉄道がひかれるようになった頃です。

彼の故郷であるこの地はストウ川が流れており、
かつては川や運河をつたって物資が運ばれていたため
鉄道が作られるまでは、
それなりに栄えていたのだそうです。

しかし、鉄道に役割を奪われたことにより、
造船業や舟渡し業が廃れていき、
この地は一介の貧しい田舎町に転落してしまったそうです。

幸か不幸か、そんな風に見捨てられた地域だったので、
周辺の村や森を開発することなく、
その当時のままの様子が現在も残っているわけです。

ここにはコンスタブルの父親が所有していた水車(ミル)があり、
その名をとって Flatford Mill(フラットフォード・ミル)
と呼ばれています。

現在のフラットフォード・ミルは
ナショナルトラストが管理しており、
小さな展示場やカフェなどが作られていて
ちょっとしたテーマパークのようになっていました。

「当時の景色がそのまま残っている」と聞いていたので
実際に私の目で見た景色と
コンスタブルが描いた風景画を見比べるのが
今回の旅の目的のひとつでもありました。

たとえば、こちらです。

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「フラットフォードミル近くの造船」というタイトルの絵で、
船を作っている様子を描いています。

こちらは、現在こんなふうになっています。

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そして、こちらは「ストウ川からの景色」
というタイトルの絵です。

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現在の景色は、こちらです。

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私は有料のガイドツアーに参加したので
これはガイドさんに教えてもらったのですが・・・

実は、コンスタブルは『見たままのもの』を
カンバスに描いたわけではないのです。

例えば、絵画には遠くに白くて細長い建物が見えます。
これは、近くにある Dedham(デダム)という村の教会なのですが、
実際には、この場所からは見えません。

写真は木が生い茂っていて、
その先が見えなくなっていると思いますが、
茂みの向こうに行って眺めて見ると、
教会は見えないわけではないのですが、
とても小さく米粒大に見えるのです。

また、教会の右側に
オレンジ色の帆をかかげた船が見えますが、
ご覧の通り小さな運河で、
風を受けて走る帆船が通れるようなところではありません。


故郷サフォークを好んで描いたコンスタブルですが、
彼が描いたものは理想的な故郷であり、
絵画をよりドラマチックなものにするために
現実にはないものを描き加えたり、
修正したりしていたのです。

その最たる例が、こちらの絵画です。

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「水門を通る船」というタイトルで、
少年が水門を開けてボートを通しているところを描いています。

そして、こちらが18世紀から残っている実際の水門です。

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このように、
描かれている水門に比べると高さもありますし、
何よりも水平に渡されている太い木があります。

ガイドさんの話では、
このように大きくて、
横に太い木のある水門を描いてしまうと、
その背景にあるデダムの教会や地平線が隠れてしまい、
背後の景色が台無しになるため、
コンスタブルは意図的に
本物とは異なる水門を描いたのだそうです。

実はこの絵は、横長の構図と
縦長の構図の2枚の絵が描かれています。

面白いことに、縦長の構図のほうが
横長のものの何倍もの値段で売れたそうです。

私にはよくわかりませんが、
絵画というものは構図も重要なのでしょうね。


こうしてじっくり見てみると、
昔ながらの景色が残っていて、
イギリスは歴史のある国であることを実感します。

こうした自然が破壊されず、
そのまま残っているところは
緑や自然が好きな
イギリス人の国民性のおかげかもしれませんね。

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