11月29日 ロンドンブリッジでのテロ

昨日のブログにコメントを下さった皆さん、
どうもありがとうございます。

一晩明けて、少し落ち着きました。

昨日のこと、順を追って
お話しさせてください。

昨日はお昼休みに
Borough Market(バラ・マーケット)へ行ったのです。

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会社からは少し遠くて、
バスと徒歩で20分あまりかかるのですが、
以前、会社の同僚がマーケットで買ってきてくれた、
バスク地方のチーズケーキが美味しかったので、
それを買いに行ったのです。

と言いますのも、今週末は私の誕生日祝いで
友達が遊びに来てくれることになっていたので、
ささやかながら、美味しいケーキを用意しようと、
遠出をしたのです。

バラ・マーケットは高級食材や
食べ物の屋台で有名で、
ロンドンブリッジの南側のたもとにあります。

昼時のマーケットは混んでいるので、
少し時間をずらして行くことにして、
マーケットには13:45分くらいに到着しました。

一通り屋台を回ってみたのですが、
目的のバスク地方のチーズケーキが売っていません。

「おかしいなぁ」と思いつつ、
もう1周マーケットを回ってみましたが、
チーズケーキを売っている屋台は2つだけで、
1つはドイツ風、もう一つはキャラメルチーズケーキでした。

残念に思いながらも、
せっかく来たのだから・・と、
ドイツ風のチーズケーキを買いました。

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美味しいかどうか分かりませんが、
友達は優しいので、
きっと喜んでくれるだろうと思いつつ、
急ぎ足でバス停に向かいました。

すると乗ろうと思っていたバスがちょうど出たばかりで、
バス停から30mくらいのところ、
橋の上でバスが渋滞にはまって止まっていました。

この分なら、橋を渡った反対側にあるバス停に行けば、
あのバスに乗れるだろう、と思い、
そのまま橋の左側を、北に向かって渡り始めました。

お天気が良く、少し肌寒い日でしたが
青空が広がっていたので、
ずっしりとしたチーズケーキを抱えながら
明るい気分で歩いていたら、
橋の半分ちょっとくらいまで行ったあたりで、
向こう側から黒いコートを着た男性が
両手を広げながらやってきました。

そして私や周りの人たちに向かって、
「戻ってください」と言いました。

今朝は寒かったから、
また水道管でも破裂して
道路が通行止めになったのかな?

でも、それなら車道は
通行止めになっていないだろうから
戻ってバスに乗れば、間に合うかな?

そう思った私は、
1時間の昼休み時間内に帰れるか心配だったこともあり、
立ち止まって、前方に目を凝らしながら、
こう聞きました。

「歩道だけが通行止めですか?
それとも車道も通行止めなのでしょうか?」

すると男性は、
おもむろに右手を高く掲げて、
警察バッジを見せながら
「車も通れません。早く戻りなさい!」と強い口調で言いました。

バッジを天高く掲げて市民に退去を命じる光景なんて、
ドラマでしか見たことがなかったので、
驚きつつも、素直にUターンして歩き出しました。

でも、時間内に戻らないと
また上司に嫌味を言われたり、
お小言を言われるかもしれないと心配だった私は、
さらにこう聞きました。

「何かあったんですか?
すぐに通れるようになりますか?」

すると、警官はチラリと私を見ましたが、
固く口を結んだまま黙っていました。

私の発音が下手過ぎて、
聞き取れなかったのかな?と思ったので、
もう一度同じことを聞きましたが、
今度は、警官は真っすぐ前を見たまま、
何も答えませんでした。

なんか様子が変だなぁ・・・と思いつつも、
警察バッジを見る機会なんてそうそうないだろうから
ブログに書こうと思って、
後ろから警官の写真をとりました。

右手に持っているのが、警察バッジです。

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今思えば、この人に「戻りなさい」と言われたから
テロに巻き込まれずに済んだわけで・・・・

いわば、この人は私の命の恩人です。

そして、この写真を撮った3秒後くらいのことです。

突然、後ろから大勢の足音が聞こえてきました。

え?と思って振り向いたら、
沢山の人たちが必死の形相で走ってきます。

何が起こったのか?と茫然としつつ
立ち止まって見ていたら、
誰かが私の右肩を叩いたので、
ギョッとしながら右側を振り向くと、
紺色の制服の右胸に施されている、
赤いバラの刺繍が目に入りました。

「あ、バラだ。かわいい!」と思った直後、
男性は「走れ!」と言って、
私の背中を軽くたたきました。

今思うと、あの制服は
バスの運転手さんの制服に似ていました。

私は橋の半分以上を渡っていましたし、
また、私服警官が「戻れ」と言って
市民を追い返していたはずなので、
私から現場までの間には
歩行者は殆どいなかったはずです。

おそらく、バスの運転手さんがドアをあけて
乗っていた人たちを逃がしたのだと思います。

反射的に走り出した直後、
パン!パン!パン!パン!と、
複数の銃声が聞こえました。

ニュースで見ると2発しか撃たれていないようなのですが、
電車の高架が近くにあったので、
音が反響していたのかもしれません。

その音を契機に、
人々の足が早まりました。

そして、また次の銃声が聞こえました。

銃声が近づいているような気がしたので、
振りむいてみると、
人々は四散していました。

さっきは歩道を怒涛のように人が動いていましたが、
今は車道や道の反対側にも散らばっていて、
私の後方には、あまり人がいませんでした。

誰かが銃を持って追いかけてくるかも!

そう思ったら、私も全力ダッシュしていました。

全力で走り出した直後、
ライフルを抱えた機動隊の人が2人、
現場に向かって駆け出している様子が見えました。

高架をくぐって、
バラ・マーケットに戻ると、
楽しそうにお料理の実演をしている男性が目に入りました。

息を切らしながら、
見るともなしに見ていたら、
彼は事件には気づいていないようで、
「なんだか、外が騒がしいねぇ」などと
笑いながら見ている人たちに話しかけていました。

さっき見た機動隊のライフルと、
このシェフの陽気な様子にギャップがありすぎて
妙に現実感がなくて・・・
自分でも頭が冷静になるのが分かりました。

さて、これから帰らなくちゃ・・・

そう思って、バスに乗るか、
地下鉄に乗るか考えていましたが、
万が一、地下鉄に犯人がやってきたら
袋小路で逃げ場所がないかもしれないと思い、
バスに乗ることにしました。

でも、車も退避しようと一方通行を逆行したり、
Uターンしたりで、
かなり酷い状態になっていました。

でも、高架下部分は警官が通行止めにしていて、
すでに秩序を取り戻しつつあるようにも見えました。

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物凄い数のパトカーがやってきたので、
道路も混雑しているかもしれないと思い、
遠いけれど、歩いて帰ることにしました。

陽気なシェフを見ながら歩道に出ると、
今度は救急箱らしきものをもった警官が
こう言いました。

「どこでもいいから、建物内に避難してください!」

え、そんなことしていたら上司に怒られちゃうよ!
と思った私は、警官の言葉を無視して、
事件現場とは反対方向に歩き出しました。

でも、歩き出して1分後くらいに、
また背後から、
バタバタと大量の人が走ってくる音が聞こえたのです!

ああ、こんなことなら警官の言葉を守って、
建物内にいれば良かった・・・

そんな風に思った直後、
「そんな後悔、今更したって遅い!」と自分を叱咤し、
また全力で走り始めました。

1分くらい走ったところで、
みんなスピードを緩めはじめたので、
私も立ち止まりました。

特に犯人が来た様子もなかったので、
たぶん、パニックになった誰かが走り出して、
それに呼応するようにして、
みんな走り出しただけなのかもしれません。

そこから、携帯の地図を見ながら
オフィスに戻りました。

途中、橋を渡ったのですが、
海からも警察が駆けつけていました。

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途中、コーヒー屋さんがあったので、
コーヒーを買いました。

温かい店内で一口すすったら、
急に手が震えてきました。

そして、思わずこう口にしていました。

「生きてて、良かったぁ・・・」

こんな短い時間の間に
いろんなことがありました。

そして、少なくとも2人に、
今日は命を救われたと思いました。

1人は「戻りなさい」と言ってくれた警官。

人々をパニックに陥らせないよう、
落ち着いた様子で、
でも言い返すことを許さないような
断固とした口調でした。

もう1人は「走れ!」と言ってくれた運転手さん。

言われなくても走っていたとは思いますが、
自分のことだけでも必死だったろうに、
他の人たちは、ただ逃げることだけしていたのに、
赤の他人を心配してくれた度量のある人です。

二度と会うことのない人でしょうが、
心から感謝しています。

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posted by イチイ at 08:21Comment(14)イギリスの実情