16世紀の音楽 ハープシコード

この前の水曜日、
病院帰りに Fenton Houes へ行きました。

Music Talk というイベントが開催されていて、
16世紀に作られたハープシコードの演奏と、
楽器の説明を聞くことができました。

ずっと立ちっぱなしで1時間半だったので、
終わった時には、膝が痛くなってしまいました。

しかも、最初は15人くらいいた人たちも、
途中からパラパラと帰っていって、
最後には、私を含めて4人しか残っていませんでした。

さらに驚くべきことに、
ハープシコードを弾いていた男性が、
なんと、盲目なのです。

おそらく60歳は超えているだろうと思われる、
背の高いやせぎすの男性で、
節の浮き出た手の甲から続く、細くて長い指が
しなやかな動きで鍵盤の上を舞うように動いていました。

鍵盤が見えないはずなのに、
楽譜も読めないはずなのに、
流れるような清々しい音を奏でていました。


私は知らなかったのですが、
ハープシコードと呼ばれる楽器には、
色々なタイプのものがあるそうです。

たとえば、ハープシコードと一括りにされているものにも、
弦が3セット分張ってあるものもあれば、
2セットのものもありました。

どういうことかと言いますと、
鍵盤1つに1本の弦が繋がっており、
全ての鍵盤に繋がった複数の弦を1セットとすると、
弦のセットを多く備えているハープシコードほど、
深い音が出るのです。

なぜなら、弦が1セットのハープシコードに比べて、
3セットの弦があるハープシコードでは、
1つの鍵盤を押したときに弾かれる弦の数が多くなるのです。

弦が1セットの場合は、
鍵盤を押すと1本の弦をはじくだけですが、
3セットあった場合には、一度に3本の弦をはじくことになり、
それだけ音が大きくなるわけです。

演奏者は、鍵盤がはじく弦の数をレバーで調整しながら、
ときに軽快な音を出したり、
複数弦を弾いたときに出る深い音を響かせたり、
音にアレンジを加えながら、弾いていました。

500年も前にこんな精密な楽器が作られていて、
それが、現在も当時と変わらない音を
聞かせてくれていることに、驚きました。

「バッハはこんな音を奏でながら、作曲したのかしら?」
そんな風に考えると、
タイムスリップしたような気分にすらなります。

スピネット、ヴァージナル、クラビコードといった
同種の鍵盤楽器が展示されており、
それらも実際に弾いて、説明してくれました。

特に、私が興味をもったのは、
こちらのクラビコードです。

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蓋を閉めると長方形の木箱になって、
一見すると、ポータブル・キーボードのようです。

実は、これこそがピアノの原型となった楽器で、
ピアノのように、木製のハンマーが弦を叩いて音を出しています。

ハープシコードは、鍵盤を押すことで、
鍵盤の先についている爪が、
弦をひっかいて音を出します。
(ギターを弾くときのピックを思い出していただけると、
音の出る原理が分かりやすいと思います)

つまり、ハープシコードは見た目がピアノと似ていますが、
ピアノとは音を出す原理が違うのです。

しかも、クラビコードは木製のハンマーが
弦を叩いて音を出すので、
鍵盤に置いた指を小刻みに揺らして、
その振動を木製ハンマーに伝えることにより、
木製ハンマーが小刻みに弦を叩くことになり、
まるでビブラートのように、
震えた音が生まれるのです。

こういう原理を考えた人って、天才だわ・・・
そんな風に思いながら、クラビコードが奏でる、
低い音を聞いていました。

このクラビコードの内部には、
手書きのお花が描かれていました。

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花の名前は分かりませんが、
ワスレナグサ、コスモス、キキョウみたいなお花です。

数百年前に彩色されたものが、
いまだに鮮やかな色を保っています。

これを描いた職人さんは、
こうして何百年後かに、
私がブログで日本の皆さんに紹介するなんて、
きっと夢にも思わなかっただろうな・・・

そんな風に思うと、
なんだか不思議な縁を感じます。


ガンかもしれない、と言われたときに
「水彩画を習ってみたいし、ピアノも弾いてみたい」
なんて思っていましたが、
こうしてピアノを始めとする、
鍵盤楽器の演奏を目の当たりにすると、
とても羨ましい気持ちになります。

演奏が終わった時に、
奏者の人にお礼を言いに行きました。

「とても素敵な演奏でした。
こんな風に弾けたら、楽しいでしょうね」

そう言うと、彼はにっこり笑いながら、
こう答えました。

「そうだね。確かに楽器を演奏することは
Theraputic(心が癒される)だね」

そうかぁ、ピアノは弾いていると癒されるのか・・・
そう思うと、余計にピアノを習いたくなってきました。

私の部屋は狭くて置く場所がないのですが、
残りの人生の時間は限られいているので、
どうにかできないか、考えてみようと思います。