ロンドンに来たことのある方は
ご存知だと思いますが、
ロンドンのバスの運転手さんは
感じの悪い人が沢山います。
運転というストレスにさらされているので
仕方ないのかもしれませんが、
行き先を聞いても
こちらに目を向けもせずに
ぞんざいに答えたり、
面倒そうに聞こえないふりをする、
そんな運転手さんが多いので、
それが普通だと思っていました。
今日、あるバス停でバスが停まり、
なかなか発車しなかったのです。
ふと気づくと、
バスの運転手さんが何か言っているようです。
「あれ?」と聞き耳を立てようとしたら、
運転手さんが運転席から出てきて、
「Sir, this is your stop!」
(こちらが、あなたの降りるバス停ですよ)
と大きな声で言いました。
「Sir」と呼びかけられたのは、
よれよれのジャージを着た初老の男性でした。
ボーっとしていたようで、
運転手さんが自分に呼び掛けているとは気づかず、
さらに運転手さんが「Sir, this is your stop!」
と繰り返しました。
すると、ようやく気付いた男性が、
「Thank you!」と言いながら、
慌ててバスを降りました。
おそらく20代前半と思われる、
とても若い運転手さんでしたが、
嫌な顔もせず、
わざわざ運転席を降りてまで
男性に声を掛けたことが、
とても新鮮に感じました。
不機嫌そうにしている
運転手さんが普通だと思っていたので、
とても感じの良い運転手さんに驚きました。
そして、その時に思ったのです。
運転手さんたちは
お客さんに親切にしてもしなくても
お給料は変わりません。
だから、きっと最低限のことだけをしていればいい、
と思っている人が多いのだと思います。
そして、そんな人が多いから、
お客さんたちも、それが普通だと思って、
何とも思わなくなります。
単なる「運転する人」というだけで
人と人として接することもないので、
挨拶もしないし、気にも留めていません。
でも、こうやって他と違う運転手さんがいて、
初めて、運転手さんも「人」であることを認識したのです。
全く知らない人ではあるけれど、
機械や自動運転などではなくて、
気持ちのある人間なんだ・・・と
改めて思ったのです。
相手が不愛想だから、
自分も愛想良く対応する必要はない。
運転手さんなんて、
知らない人だから。
バスに乗るお客さんたちは
運転手さんに挨拶なんてしないから。
お金を払っているんだから、
運転してもらうのは当然。
無意識のうちに、
そんな風に思っていた自分に気づいたのです。
そして、そんなふうに気にして様子を伺ってみたら、
ごくたまに運転手さんに挨拶する人がいることにも
気づきました。
確率的には20人に1人もいないくらいでしたが、
ゼロではありませんでした。
それを見ていて、
「今度から、私も挨拶をしてみよう」と思いました。
別に運転手さんと友達になりたいとか、
そういう気持ちではなく、
「運転手は態度が悪い」という
ネガティブな先入観を捨てて、
人 対 人として対応したいな、と思ったのです。
明日から、頑張ってみようと思います。
こちらは「富士山(Mount Fuji)」という名前の
フロックス(おいらん草)です。
フロックスが咲くなんて、
もう秋なんですね。