会社のお金でタクシーに乗るのは許される?

国によって違う習慣なのか、
それともその人個人の考え方なのか分かりませんが、
先週末に、こんなことがありました。

木曜日、タクシー会社からの請求書を
処理していたときのことです。

タクシーを利用できるのは、
夜の10時以降に帰宅するときか、
どうしても急いで客先に行くときだけ、
という決まりがあります。

でも、ある同僚の名前で予約されたタクシーが、
夜の8時27分に利用されていました。

そして行き先が自宅ではなく、
リッツホテルだったのです。

少し考えたのですが、
おそらく顧客主催のレセプションか何かに
上司と一緒に行ったのだろうと考えて、
そのまま処理を進めました。

すると、翌日の金曜日に経理からメールがあり、
行き先が自宅でないことと、
夜の10時前であった理由を聞かれました。

そして、それを利用した同僚にメールを転送して、
経理に返信するよう依頼しました。

結論として、それは何かのイベントに
行くために利用したタクシーで、
そのイベントは仕事とは無関係のものでした。

つまり、私用利用ということで、
その女性同僚がそのタクシー代を
会社に支払うことになったのです。

実は、その女性は先週金曜日で辞めることになっていたので、
彼女が辞める前に解決して良かったと思っていたのですが、
こんなことを言われたのです。

「はっきり言うけど、私はこの会社にガッカリしたわ。
2年間一生懸命働いてきたのに、
こんなタクシー代くらいも払ってくれないなんて、
社員に対する思いやりというものがないのよ。
最終日にこんな嫌な思いするなんて!」

正直、いろいろな意味で言葉を失いました。

まず、会社のお金で払うタクシーを
私用で利用したことに対して、
露ほども「悪いことをした」とは
思っていないことに呆れてしまい、
何と返答したら良いのか分からなかったのです。

値段としては3500円くらいで、
彼女は年収が数千万円のポジションにいたので、
そのくらいの金額は、
いわゆる「はした金」なのかもしれません。

だから、そのくらい払ってくれてもいいだろう、
と思ったのだと思います。

でも、そんな大したことのない金額なら
自分で払えばいいのに・・・とも思いますし、
小さな金額とはいえ、
これは立派な詐欺行為とも言えるわけで・・・

それなのに、逆に「はした金」をケチる会社のことを
悪く言うことに、おどろきました。


実は、経理から問い合わせがきたときには、
こんな風に反省していたのです。

「私が勝手に判断しないで、
ちゃんと聞いてから処理すれば良かった。
次からは気を付けなくちゃ!」

でも、この怒りの籠った言葉を聞いて
もしこのことを私が指摘していたならば、
「なんて細かいことを指摘する、嫌な人なんだろう」と、
この怒りの矛先が私に向いていたかもしれない、
と少し怖くなりました。

こういうルール違反のことを見つけて、
どう考えても相手が悪いことであっても、
指摘する相手の性格を考えて、
言い方を変えたり、場合によっては、
今回のように正規の筋と言いますか、
上司とか担当部署から正式に指摘してもらうようにしないと、
変なところで恨みを買いかねない、
と気づいたのです。


あまり偏見をもった言い方はしたくないのですが、
おそらく日本人だったら「会社が悪い」などとは
決して思わないと思います。

仮に思ったとしても、
こうして口に出して怒りをあらわには
しないような気がします。

でも、日本人と働いているわけではないので、
普段以上に気を付けていないと、
気づかないところで恨みを買いかねないんだなぁ、
と、目からウロコが落ちたような気分でした。


彼女はイギリスの国籍をもっていますが、
もともとはルーマニアの人(移民)です。

ルーマニア人がみんなこうだとは思いませんし、
私の思い過ごしかもしれませんが、
「もしかしたらこういう人たちが増えていることが、
Brexit に投票する人が多かった理由のひとつかも?」
とも思いました。

つまり、イギリス人のモラルや常識の範囲では
受け入れられていなかった物事が、
外国人が自分たちの常識を持ち込んで、
それに基づいて行動していたら、
だんだんとそういう発想が、
新たな常識として根付いてしまうと思うのです。

今回の同僚の言動を見て、
「少額だから、会社が払ってもいいじゃないか」という発想のように、
(彼女の言いたいことも分からなくはありませんが・・・)
突き詰めて考えれば犯罪にあたることを
ごく普通に、悪気を感じることなく行う人々が増えたら、
だんだんとイギリスのモラルや良識が
変わっていってしまうと思うのです。

だんだんと自分たちの古き良き習慣だけでなく、
イギリス人としての良識までが揺らいでしまえば、
彼らにとって住み心地の良かった国が
いつの間にか変わっていってしまうわけです。

そういうことを憂える中高年の人たちが
Brexit 反対に投票したとしても、
なんとなく頷ける気がしました。


今回のことでは、
いろいろと学んだ気がします。

仕事上での同僚に対する配慮もそうですが、
イギリスで暮らす外国人として、
日本のモラルや常識を突き通すのではなく、
この国の常識やモラルを尊重しながら
イギリスの一部として生きていきたい、
と改めて思いました。


こちらは、ボランティアしているお庭で咲いている
フレンチラベンダーです。

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ちょっと季節外れかもしれませんが、
寒さに負けずに咲く姿が、
なんとも頼もしく見えました。