(お庭の手伝いとは、別のものです)
あまり詳しいことは書けませんが、
どんなことをしているのかというと、
マイナーな博物館みたいなところのお手伝いです。
人手不足なこともあり、
つたない英語の私なんかでも、
「来てくれて、ありがとう!」と言ってくれるので、
少しは役に立ててるのかな?と嬉しくて、
毎週末、いそいそと足を運んでいます。
今日は、そこで出会ったIさんのことを
皆さんにお伝えしたいと思いました。
ただ、お伝えするには、
たぶんブログを何回かに分けて書かないと書ききれないくらい、
沢山お話ししたいことがあるので、
気長にお付き合いいただけると嬉しいです。
初めてIさんに会ったのは、
イギリスらしくない、とても暑い日のことでした。
白地に大柄な花柄があしらわれている、
ノースリーブのマキシドレスを来て、
高級そうな、大ぶりのネックレスをしていました。
旦那さんと一緒に来ていたのですが、
旦那さんも「威風堂々」という言葉がぴったりな、
豊かな白髪が印象的な、60歳代くらいの男性です。
Iさんも60歳くらいだと思うのですが、
真っ黒に髪を染めていて、
シワの目立つ顔に白髪のない真っ黒な髪の毛だったので
私が抱いた初対面の印象は、
「若作りの派手な人」でした。
Iさんの住んでいるところがメイフェアという
ロンドンきっての高級地(大使館が多いところです)だと知って、
大使とか貴族とかが多く住んでいるエリアでしたし
旦那さんも、いかにもお金持ち然としているので、
「きっと暇を持て余した有閑マダムが
暇つぶしに来ているんだろうな」くらいに思っていました。
でも、ある日、仕事が始まる前に、
Iさんと世間話をしていて、気づいたのです。
Iさんは、人の言葉を必ず肯定するのです。
たとえば、私が「私は英語が下手だから」などと言うと、
こんな風に返してきます。
「あなたは英語が下手だと思っているのね。
でも、そんなことはないわ。自信をもって。
だって、あなたは毎日お仕事ができているんでしょ」
そして、仕事のときに
「あのファイルをここに置いたほうが良いのでは?」などと言うと、
「なるほど、あなたはそう思うのね。
それは思いもつかなかったけど、素晴らしいアイデアだわ!」
などと、他愛のない小さなことでも、褒めてくれます。
「それは、いいわね!」
「素晴らしいわ!」
「なるほど!
その前向きな姿勢、私は好きよ」
・・・などなど、
決して否定的なことを言わずに、
とにかく褒めまくるのです。
慣れるまでは、
こちらがくすぐったくなるくらいで
「なんで、こんなに褒めまくるんだろう?」と
少し居心地が悪いくらいでした。
そして、そこには子供も来るのですが、
子供相手にも「なんて素晴らしいんでしょう!」と
大袈裟に褒めているのです。
「よく、あんな歯の浮いたことを言って、
恥ずかしくないよなぁ・・・」
と最初は思っていたのですが、
それを言われている子供の様子を見ていると、
全員が全員、とても嬉しそうにしていて、
褒められたことを誇らしく思っているようなのです。
「子供は、単純なことで大喜びするのかな?」
と思った私は、Iさんがいないときに、
Iさんの真似をして、
見知らぬ子供を大袈裟に褒めたのです。
ちょっと話が逸れますが、
生まれて初めて「マーベラス!!」と言ったときの
恥ずかしさといったら・・・
あんな言葉を日常的に言うのは、
ルー大柴か叶恭子くらいだと思っていたので、
まさかそんな言葉を自分が使う日が来るとは
夢にも思っていませんでした・・・
でも、「マーベラス!」とか「スプレンディド!」などと
歯の浮くような褒め言葉を、
Iさんがしているように感情をこめて
(というか、私は恥ずかしさが先に立って感情が込められないので、
とりあえず言葉に抑揚をつけて)言うと
子供たちはとても嬉しそうにしているのです。
子供は世間を知らないから、
「いえ、そんなことないです」と謙遜したり
「ボク、そんなにすごくないもん」と冷静に分析したり、
そういうことをしないんだ・・・と思い、
そこで自分の幼児時代が異常だったということに
初めて気づきました。
私は3歳くらいから記憶があるのですが、
大人の顔色をうかがっている記憶しかありません。
記憶が少ないわけではなく、
保育園で先生の顔色をうかがっていたこと、
家で親に怒鳴られたこと、
ビクビクしながら親の機嫌をうかがって、
幼児なりに親の機嫌を取ろうと思って
逆に親に「うるさいっ!」と怒鳴られて殴られたこと、
そんなことばかりを沢山覚えているのです。
誰かがたまに「いい子ね」などと褒めてくれようものなら、
「なに、嘘言って!
お母さんが私をバカって言ってたんだから。
私は、いい子じゃないもん。嘘つき!」と思って、
褒め言葉を聞いても本気で喜ぶことなど、
決してありませんでした。
だから(自分の経験が基準となっていたので)
子供があからさまな褒め言葉に喜んでいることに
心底、驚きました。
最初、あまりに素直に喜んでいるので、
「この子はバカなのかな?」とすら思ったくらいです。
でも、他の子にもやってみると、
100%の確率で、私が言う大袈裟なお世辞に喜ぶのです。
そのことが、とても新鮮な発見でした。
以前、私は子供が嫌いだと書きましたが・・・
(こちらです ↓
http://yewtree.seesaa.net/article/451315812.html)
とりあえず大袈裟に褒めると子供は喜ぶ、
ということが分かって、
まるで水戸黄門の印籠を手に入れたような気分になり、
相手をしていて、どうしたら良いのか分からなくなったら
とりあえず大袈裟に褒めるようにしていたら、
今は、以前ほど子供が嫌いではなくなりました。
そして、Iさんは、子供に対するほど大袈裟ではありませんが、
私の言うことを常に肯定してくれるので、
いつの間にか、週末になると「Iさん、今日は来るかな?」と
会うのが楽しみになっていることに気づいたのです。
そして、こうして「相手を肯定して、褒める」というのは
人と付き合う上で大切なことなんだな、と思いました。
人見知りな私が、
いつの間にかIさんと会うのを楽しみにしているのですから、
その効果は絶大かもしれません。
Iさんはテクニックではなくて、
心底同意してくれているのだと思います。
というのも、私のことをじっと見て、
最後まできちんと話を聞いてくれるし、
答えるときも良く考えて、
ゆっくりと、時にはどもりながら話すからです。
私は人と付き合うのが苦手で、
この国でも仲の良い人はNさんくらいで、
一緒にランチに行く程度の人はいますが、
誰かと一緒にいても、何を話したらいいのか、
どう対応したら良いのか分からず、
人との距離を縮めることができないのです。
でも、Iさんと話をしていて、
これなら私もできるかもしれない、と思いました。
まずは、相手のことを肯定すること、
それを心がけてみたいと思います。
Iさんと一緒にいて、気づいたことや、
思ったことは他にもたくさんあるので、
また折を見て、お話させてください。
最初は「派手なおばさん」くらいにしか思っていませんでしたが、
話せば話すほど、
Iさんの素晴らしさを感じずにはいられないのです。
ところで昨日、
駅前でこの花を買いました。

夕方4時過ぎに通りかかったら、
そのお店は4時閉店で日曜は定休日だったので、
閉店間際にすべてを売り切るために、
1束5ポンド(800円くらい)のものが、
1束1ポンドになっていたのです。
菊の花は、いまだに「お盆のお花」という
イメージが強いのですが、
この色なら日本であまり見かけないから、
あまり気にならないかもしれない・・・
と思って、黄色や白ではなく紫色にしました。