Sibi Larbi シビ・ラルビというダンサー

突然のことでしたが、昨日はショーを観に行ってきました!

こちらのショーです ↓
https://www.theguardian.com/stage/2016/oct/28/eastman-fractus-v-review-sidi-larbi-cherkaoui-chomsky-sadlers-wells


昨日は(私にとっては)色んなことがあって
胸がいっぱいというか、
自分が3倍くらい膨らまないと吸収しきれないような、
さまざまな感情と感動にあふれていました。

順を追ってお話しさせていただきますね。


昨日、お昼過ぎにNさんから携帯メッセージが届いたのです。

「突然だけど、今日の夕方、予定ある?」

昨日の夕方はジムのヨガクラスに行こうと思っていましたが
絶対に行かなくてはいけないようなものでもなかったので、
そのように返信したら、Nさんからすぐに返信が来ました。


「今日、コンテンポラリーダンスのステージを観に行く予定なんだけど、
同行者の一人の都合が悪くなってしまったので、代わりに行かない?

急なことだから、チケット代はいらないって言ってるから
お金のことは気にしないで」


お金のことは気にしないで・・・と言われたけれど
言葉を額面通り受け取っていいのか分からず、

「もしご一緒させてもらえるなら、お金は払います。
ちなみに、いくらなのでしょうか?」

と聞きましたが、チケット代は教えてもらえませんでした。

正直なところ、コンテンポラリーダンスなんて
どんなものか想像もつきませんし
「観に行こう」という発想すらなかったので・・・

失礼な言い方ですが
「タダで観に行けるなら、まぁ、いいか」みたいな軽い気持ちで
ご一緒させてもらうことにしたのです。


昨日は、NさんとNさんのお友達のKさん、
そしてKさんの同僚のHさんと劇場で待ち合わせました。

少し早めに劇場に行って、
劇場内のバーでワインを飲みながら、
その日のショーについて教えてもらいました。


チケットを貰えることになったので、
せめて・・・と思って、
皆さんのグラスワインを私が払ったのですが、
4つで20ポンド以上(3千円以上)もしました。

私はこちらでも贅沢を控えているので、
市内のバーやパブには行ったことがないので、
こういうところの相場を知らなかったのですが、
ほんと、こちらの物価は高いなぁ・・・
と、ちょっと気持ちが凹んでしまいました。

でも、その後であまりに素晴らしいステージを観たので
そんな気持ちは吹き飛んでしまいましたけど(笑)

というのも、あのショーなら3千円どころか、
(もし私がお金持ちだったら)3万円くらい払っても
観る価値があると思いました。


Kさんは、このSibiという振付師&ダンサーの男性が好きで
もう10年以上も前から彼のステージを見ているそうです。

アントワープに拠点をおくダンスカンパニーだそうですが
ヨーロッパだけでなく、日本でも公演している、
その筋では有名な人のようです。

「でも、日本では文化村のような大きなホールでの公演になるから
ロンドンの、こういう中規模のシアターで観たほうが
臨場感があって、ずっと良いのよ!」

と、やや前のめりになりながら
目を輝かせて話しているKさん。

その様子を見ているだけで、
彼女がどれだけこのダンサーのことを気に入っているか、
とてもよく分かりました。


正直なところ、ダンスショーといえば
東京ディズニーランドのパレードやショーしか見たことがないので
コンテンポラリーどころか、
バレエやジャズ、ヒップホップですら
まともに見たことがありません。

「『猫に小判』とか『豚に真珠』って、
こういうことを言うのかもなぁ・・・」

と心の中で呟きながら席についたのですが、
幕が開いたとたんに、
目がステージに釘付けになりました。


ダンスなので、ストーリーがあるわけではないのですが、
この Sibi という振付師兼ダンサーの男性が伝えたいと思う
メッセージがひしひしと伝わってきます。

一部ナレーションが入ったりもしましたが
(でも、後からKさんに聞いた話ですと
今日はナレーションが少ないほうだそうです)
基本的にダンスと音楽、
そしてステージのセットで全てを伝えていくのです。


たとえば、ステージの背景に大きく映ったシルエット。

背景の端に大きく写ったシルエットを見たとき
ステージの上に立っている人が
大きな無力感に打ちのめされたような、
そんな悲しみを感じているように見えました。

シルエットひとつで、
悲しみや孤独感を表現できるんだ・・・

その発想力と美しい絵画のように整ったステージ、
そしてそれらが表現する感情の豊かさに驚きました。



また、ステージの一方で拳銃に撃たれ続ける人がいて、
そこから螺旋を描くように並べられたオブジェの先に
テレビのリモコンを持って座っている人がいました。

ああ、これは世の中で起こっている
残忍なテロや殺人事件を、
他人事のように見ている多数の人々、
つまり私たちのような人を表現しているのだな、と思いました。

しかし、一連のダンスが終わって、
その撃たれている人が身動きしなくなったとき、
その螺旋上に並べられたオブジェがドミノのように倒れていき、
最後に椅子に座ってリモコンを手にしていた人を押し倒したのです。

「言われてみれば、今は他人事ではあるけれど、
こうした世界で起きている出来事も
遠いつながりの先には私にも関係していて
いつか私たちの生活を脅かすことにもなりかねないよね。
他人事と割り切って、何もしないでいるのは良くないのかなぁ・・・」

そんな風に思いながら、
倒れたオブジェの下で身動きしないダンサーが
まるで遠い将来の私たち一市民のような気がしました。



ショーの後でみんなとご飯を食べたのですが、
そのときに聞いた話だと、同じシーンについて
KさんやNさんは違う印象を抱いたようです。

「こうして、観る人によって受ける印象が違う、
想像の幅を許しているところが、
コンテンポラリーの素晴らしさなのよ」

かつてコンテンポラリーダンサーを目指していたというKさんは
そんな風に語っていました。


いろいろと印象的なシーンが沢山あったのですが、
今の私に一番響いたのは、あるナレーションです。

録音していたわけではないし、
英語だったのでウロ覚えではありますが、
こんなことを言っていました。


「今の私たちは、
『考えること Thinking』に憑りつかれている。

常に考えていて、頭の中には常に『考え』が渦巻いていて、
静かな時間、自分のことを見つける時間をもつことができない。

『何も考えるな』と言われても、
その時点で、すでに『何も考えるな、と言われた』ということを考えていて
本当の静寂というものを持つことがない。

ときに、この『考える』ということをよそに置いて、
頭の中を本当に空っぽにしてみると
自分というものが分かるかもしれないが、
逆にその空っぽの状態に耐えられなくて
人間というものは、また『考え』てしまうものだ」


そんな感じのメッセージでした。

私の場合、こんな年になるまで何も考えずに生きてきてしまったから
これからは考えて行動しなくてはいけない、と思いました。

そのときのことは、このあたりに書いています ↓
http://yewtree.seesaa.net/article/458478271.html


だから、最近は「やること、考えることリスト」を作って、
そのリストを着実にこなしていく、そんなことをしていたのです。

そして、そのリストを頻繁に見ながら
「あれもしなくちゃ、これもしなくちゃ」と必死に考えるばかりで
考えても結果のでないこともあるのに、
考えても、自分の力で結果を変えられないこともあるのに、
何でもかんでも考えなくちゃ!と自分を追い詰めていたような気がします。

そして、最近はいつも目が吊り上がっているというか
あまり余裕がないというか、落ち着かないというか・・・
なんだかしっくりこなかったのです。


もしかして、頭を空っぽにする時間を作らないと
考えることがストレスになって、
その考えに押しつぶされてしまうかも?

もしかしたら時に頭を空っぽにしたほうが
良い考えが浮かぶのかもしれませんね・・・



こちらが、パンフレットとチケットです。

7E1D6FF9-2ABE-4EE4-8615-00BA5B09EBE6-thumbnail2.jpg

「お金はいらないから」と、値段のところが千切られています。
銀行勤めの駐在員さんがくれたチケットだそうです。

「まだ30代前半だけど年収が何千万円っていうお金持ちだから、
こんなチケット代くらいなんでもないのよ。
気にせず、もらっておきなさい!」

と、帰りがけにNさんに言われました。

こんな素敵なショーのチケットをタダであげられるなんて、
心から羨ましいと思います。


お金に余裕があるのも羨ましいのですが、
こうして、見知らぬ私に大きな感動をくれるという、
その寛大な心が羨ましいです。

私は、自分の生活を打ち立てることで精一杯で、
他の人に感動を与える余裕なんてありませんから・・・

物質的に余裕のある人は、
その余裕を他の人に分けてあげることができるのですね。

今は、感謝してそれを有り難く受け取ることしかできませんが
いつの日か、私も誰かに感動を分けてあげられるくらいの
余裕ができるといいな、と思いました。

にほんブログ村 花・園芸ブログ ガーデニングへ
posted by イチイ at 20:49Comment(0)絵画・建築など