経済学講義「グローバル金融危機から10年を経て」

昨日の講義は、目からウロコの経験でした。

政治や経済なんて
遠い世界で起こっている出来事で、
私の日常生活とはかけ離れた遠い次元で、
偉そうで、もったいぶった誰かがやっていること、
文字通り「他人事」だと思っていました。

でも、この講義を聞いて、
考えが一変しました。

昨日も書きましたけれど、
「絶対に、講義の途中で寝るだろう」と思っていたのに、
いつの間にか話に引き込まれて、
あっという間の1時間半でした。

世界で活躍する人たちだけあって、
話が上手なのかもしれませんが
経済なんて、微塵も興味がなかったのに・・・

家に帰ってきてからずっと、
昨日聞いた言葉の中で意味の分からないことを調べたり、
パネリストたちの過去の偉業を調べたりしていました。


昨日の講義は、LSEの教授でもある、
Catherine Schenk さんのプレゼンテーションに始まり、
それについてパネリストたちが意見を述べて討議する形式でした。

プレゼンテーションの内容は
「Ten Years after the Global Financial Crisis」
(世界経済危機から10年を経て)というもので、
これが本だったら、
目次を開いた途端に、本を閉じてしまっただろうな、
と思うようなタイトルでした。


正直に言いますと、
講義の内容をすべて理解できたわけではありません。

IMF など聞いたことのある言葉もありましたが、
IBCとかECBとか、聞いたことのない言葉も多くて、
前後の内容から、話していることを推測していました。

そんななかで、一番 面白いと思ったのは、
「歴史は繰り返す」という言葉を
裏付けるかのような内容だったことです。

1930年代、1970年代に起こった、
グローバル金融危機を取り上げ、
2008年に起きたリーマンショックから始まった
金融危機について比較・分析していました。

金融危機が起きるたびに、
これまでバラバラで足並みの揃わなかった国々が、
渋々ながら共通の制度を打ち立てて、
世界的な金融危機を乗り切ってきた、
軌跡が分かりました。

金融危機が起こるたびに、
新たな対策機構が設けられており、
予定していたようには機能しなかった制度もあるようでしたが、
とりあえずは世界が一致団結して、
乗り越えてきたわけです。

危機に陥らないと協力しないのか・・・
と思ってしまう反面、
それでも、いろいろな国が妥協して、
知恵を絞って、サバイバルしてきたわけなので、
それって、すごいことですよね。

そういえば、だいたい40年周期で
世界金融危機が起きているので、
「次は2050年くらいかもね」などと
笑いながら話していました。


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キャサリンさんの講義が終わると、
それを題材にして、
3人のパネリストが意見を述べ始めました。

まずは、6年間にもわたって
Cabinet Secretary(内閣官房長官)を務めたこともある、
Lord O'Donnell(Gus O'Donnell)さんが話しはじめました。

ガスさんは、「イギリス紳士」という言葉は
この人のためにあるのかもしれない、
と思ってしまうような、素敵な中年の男性でした。

彼は、イギリスでG7が開催されたときに、
総理府にオバマ元アメリカ大統領が訪れた時や
80人以上も集まるG20のときのエピソードを披露してくれました。

単なる興味本位な話ではなく、
面白いのに、ちゃんと経済の話に繋がっていて、
分かりやすく説明してくれる、その話術に感嘆しました。

そういえば、G7の話をしていたときに、
各国代表の印象を話してくれたのですが、
日本については、「Very, very, very passive」
(とにかく、ものすごく受け身だった)と、
very(とても)を3回重ねて言っていたので、
よほど内向的な印象を受けたようです。

きっと首相はその場にいるだけで、
何も発言することなく、
頷いていただけなのでしょうね。

仮にも日本の代表なのに、
他国の内閣官房長官に、
そんな風に思われてしまうなんて、
とても残念に思いました。


次に、LSE大学の教授でもあり、
イギリスの Monetary Policy Committee(金融政策委員会)の
副委員長を務める Cherlies Bean さん。

チャーリーさんは1つ1つのことを理論立てて
理路整然と分かりやすく説明してくれるので、
さすが教授をしているだけはあるなぁ、と思いました。

話していることは難しい経済学のことなのに
とても分かりやすい説明なので、
ついつい「次は、どんな話をしてくれるのだろう?」と
子供が紙芝居に夢中になるような、
そんな感覚を覚えました。


そして、3人目のパネリストは、
エジプト生まれの女性エコノミストで、
イングランド銀行の副頭取も勤めたこともあるという、
Minouche Shafik さんでした。

ミノウスさんは辛口コメントが多く、
今回のプレゼンテーションのタイトルにしても、
こんな風にブラックジョークを飛ばしていました。

「私たちは『Global Crisis(世界危機)』じゃなくて、
『North Atlantic Crisis(北大西洋危機)って呼んでいたわ。
だって、私の母国では金融危機なんて起きていなかったもの」

歯切れよく、テンポよく、
そして要領を得た話し方をする女性で、
ものすごい肩書を持っているのに、
ちっとも偉そうではなくて、
親しみやすい雰囲気の女性でした。


私は、ミノウスさんのお話に興味をもちました。

世界の首脳が集まる会議、
G20とかG7において一番大切なのは、
「ガバナンスだ」と言っていたのです。

ガバナンスというのは、
組織における意思決定や合意形成のシステムのことです。

各国首脳が集まっても、
それぞれが主張をもっているため、
なかなか合意に至らないことが多いらしいです。

たとえば、ギリシャが経済破綻したときは、
ある国(たぶんドイツではないかと思います)が手を挙げて、
こんな感じのことを言ったそうです。

「私の国は、長い歴史の中で
経済が破綻したことなんて、一度もありません。

だから、私が与するこの組織でも、
経済破綻なんてあり得ません。

だから、経済援助なんて問題外です」


ものすごい自信だなぁ、と思いつつ、
こんな風に主張する国々の中にいたら
日本が「very, very, very 受け身だ」と言われるのは
当然かもしれないと思いました。


講義そのものも面白かったのですが、
聴講生たちが老若男女問わず、
幅広い世代の人たちが参加していたことです。

しかも世界的に有名な人たちの話を無料で、
ただの一般人が気軽に聞きに来れるという、
その環境に驚きと羨望を感じました。

私が若い頃にこんな機会があったなら、
将来の選択肢を
きちんと自分の頭で考えることができたかもしれません。

日本だと偏差値によって
行く大学を決める傾向がありますよね。

でも、もし私が高校生くらいのときに、
こんな講義を聞いていたとしたら、
「経済をもっと勉強したい」と思って
本気で勉強したと思います。

実際、昨日の講義を聞いて、
「今からでも色々と経済のメカニズムを知りたい」
と思うようになりました。

あんな素晴らしい学者さんたちの講義を聴けるなんて、
LSEの学生が羨ましい、と心から思いました。

こういう機会があるということは、
それだけ見聞が広がって、
将来への選択肢が広がるということなので
この国の若者たちは、とても恵まれていると思います。


この国に来て、いろいろなものを見聞きするたびに
日本は選択肢が少ない、
窮屈な国のような気がしてきます。

日本にも良いところは沢山ありますが、
自分の世界を広げることや
キャリアを築いていくことについては、
まだまだなのかもしれません。